コラム

まず押さえておきたいのは、「火葬」と「埋葬」は別々のプロセスであるという点です。火葬とは、亡くなった方の身体を火で焼き、遺骨として残す行為。これは死後24時間以内には行ってはならないと法律で定められており、自治体の許可も必要です。日本では現代の葬儀においてほぼ100％が火葬で行われています。
一方、埋葬とは、火葬後に残された遺骨を墓地に納めたり、土に還したりする行為を指します。埋葬には「墓地、埋葬等に関する法律」が適用され、正規の墓地や納骨堂で行う必要があります。このように、火葬は遺体処理の一環、埋葬はその後の供養の始まりといえるでしょう。

日本で火葬が主流となったのは、実は明治時代以降のことです。それ以前は土葬も一般的でしたが、都市化による衛生上の懸念、土地の確保の問題、そして仏教の影響（とくに浄土宗や真言宗など）が強まったことにより、徐々に火葬が定着していきました。
現在では、ほとんどの自治体に火葬場が整備され、火葬を前提とした葬儀プランが基本となっています。土葬も法的には禁止されてはいませんが、認可された場所でなければ実施できず、ほとんど現実的ではありません。

家族葬が選ばれる理由は、「身内だけで静かに送りたい」「費用を抑えたい」「派手な儀式は望まない」など多様です。そして、その中で増えているのが「火葬式（直葬）」と呼ばれる形式です。これは、通夜・告別式を省略し、火葬のみを行う非常にシンプルなスタイルです。
火葬式は費用が安く済む反面、儀式が簡略なため「何もしなかった」との後悔につながることもあります。だからこそ、少人数でもしっかりとお別れの時間を確保し、心の準備を整えることが大切です。自宅での思い出話、好きだった曲を流す、手紙を棺に添えるなど、儀式以上に“想いを伝える方法”はいくらでもあるのです。

現代の埋葬は多様化が進み、従来の「家墓」に加え、以下のような選択肢が一般的になっています：

永代供養墓：寺院や霊園が管理・供養を代行。承継者不要。費用も明確で安心。

樹木葬：墓石の代わりに樹木を墓標とする自然葬。自然回帰志向の方に人気。

納骨堂：屋内型でカード式ロッカーや自動搬送型があり、都市部でも利用しやすい。

合同墓（合祀墓）：複数の遺骨を一緒に納める形式。費用が抑えられ、永代供養込み。

散骨：海や山などに遺骨を撒くスタイル。遺族の心理的ケアが必要な場合も。

こうした埋葬方法は、家族葬を選ぶご家庭とも相性がよく、「お墓を守る人がいない」「無理な費用はかけたくない」という現代的な悩みを解決してくれます。

家族葬では、葬儀後すぐに納骨せず、いったん遺骨を自宅で安置する「手元供養」を選ぶ方も多くなっています。たとえば、四十九日や一周忌などの節目までゆっくりと故人と向き合い、その後、心の整理がついた段階で埋葬先を決めるという流れです。
また、最近では「ミニ骨壺」や「遺骨アクセサリー」などを使って、自宅で遺骨の一部を保管するケースもあります。これらは小さく控えめなものが多く、リビングや仏壇がない家庭にもなじみやすい工夫がされています。

葬送において注意したいのは、宗教や地域によって火葬・埋葬の考え方や流れが異なることです。たとえば、浄土真宗では「成仏」の考え方が異なるため、供養よりも念仏を重視する傾向があります。また、沖縄など一部の地域では、火葬後すぐの埋葬ではなく、一度洗骨してから納骨するという文化も残っています。
こうした背景を踏まえた上で、家族葬を計画する際にも、宗教者や地域の慣習に配慮することが、親族間のトラブルを避けるポイントになります。

火葬と埋葬は、どちらも亡き人を見送り、想いを伝えるための大切な行為です。しかし現代の家族葬では、従来の形式に縛られず、自由で柔軟な“供養のかたち”が求められています。
葬儀を簡素にしてもいい、埋葬を急がなくてもいい――大切なのは、故人への感謝と、残された人の心の安らぎです。小さな家族葬であっても、その一つひとつの選択が丁寧であるほど、送り方には深い意味が宿ります。
「どう見送るか」ではなく、「どう想いを伝えるか」。その視点を持つことが、これからの時代の“本当の供養”なのかもしれません。