コラム

家族葬が選ばれるようになった今、葬儀後の手続きや遺品整理も、より“家族主体”で進める機会が増えています。その一方で、どこから手を付ければよいのか分からず、遺族が心身ともに疲弊してしまうケースも少なくありません。そんな中、近年注目を集めているのが「終活サロン」による支援です。専門的なアドバイスや心のケアを受けながら、故人の思いを尊重し、家族の負担を最小限に抑える――終活サロンを活用することで、そんな“あたたかい遺品整理”が可能になります。本稿では、終活サロンが提供する遺品整理の手順と、家族葬との関わりについて詳しく解説します。

遺品整理は、単に「物を片づける」作業ではありません。そこには、故人の生きた証や思い出が詰まっており、手に取るひとつひとつが、遺族にとっては感情を揺さぶる存在です。特に家族葬のように、親しい人たちだけでお見送りをした場合、葬儀後の静けさの中で一気に喪失感が押し寄せることもあります。
終活サロンでは、こうした遺族の気持ちに寄り添いながら、整理作業を段階的にサポートします。多くのサロンでは、遺品整理士や終活アドバイザーが常駐しており、精神面のケアを交えながら進めることができるため、無理なく片付けを進めることができます。
また、終活サロンでは法的な知識や手続きの流れも整理しており、相続や不用品処分の相談、さらには仏具や供養に関する手配までワンストップで対応可能です。何よりも「一人じゃない」という安心感が、大きな支えになるのです。

遺品整理を始めるうえで最初に必要なのは、遺族それぞれが気持ちの整理をつけることです。いくら時間が経っていても、突然片づけを始めると、心がついてこないことがあります。終活サロンでは、最初にカウンセリングのような対話の時間を設け、故人との関係や、どのように進めたいかを家族で話し合う場を提供します。
「何から始めればいいのか分からない」という声には、専用のチェックリストやアドバイザーとの個別面談が効果的です。「無理に捨てなくてもいい」「今は思い出を手元に残していい」というような助言は、遺族の心を解きほぐし、前向きに進む力を与えてくれます。
また、家族によっては、気持ちの整理のタイミングがずれることもあるため、すぐに整理を始めなくても構いません。「まだ片付けたくない」という気持ちを尊重しながら、それぞれのペースで進められる体制を整えることが大切です。

いざ作業を始めるとなると、最も時間がかかるのが「仕分け」です。故人の遺した品物は膨大で、どこから手をつけていいかわからなくなりがちです。終活サロンでは、基本的に以下のような基準で仕分けを進めるよう助言しています。

残すもの（形見・記念品・重要書類）

譲るもの（他の家族や知人に引き継げるもの）

供養するもの（仏具・人形・写真など）

処分するもの（衣類・日用品など使用済みの物）

この際、すべてを遺族だけで判断するのは困難なこともあります。遺品整理士が立ち会い、品目ごとに注意点や選別のヒントを提示することで、効率よく、そして気持ちに折り合いをつけながら整理が進みます。
写真や手紙、衣類など「感情のこもる遺品」は特に扱いが難しいですが、終活サロンでは「写真をデジタル保存してから整理する」「手紙だけ別保管する」など、選択肢を広げる提案もしてくれます。

仕分けが終わったら、次は「手放す」段階に入ります。ここで重要なのは、処分＝捨てる、というだけではないということです。終活サロンでは、遺族の気持ちに寄り添った様々な方法を提案しています。
たとえば、故人が大切にしていた仏具や人形、ぬいぐるみなどは、お焚き上げという形で供養することができます。また、衣類や家具などは、状態が良ければ福祉団体への寄付やリユースも可能です。物に込められた思いを、次の誰かへつなぐ形にすることで、遺族の心にも納得が生まれます。
処分が必要な物については、専門の遺品整理業者と連携して引き取りや廃棄を行うことが多いですが、その際も「ゴミとして扱わない姿勢」を貫いてくれる業者を選ぶことが大切です。終活サロンを通せば、そのような信頼のおける業者を紹介してもらえるため、安心して任せることができます。

遺品整理がひと段落したあと、多くの遺族が直面するのが「家そのものの整理」です。持ち家であれば空き家対策や名義変更、賃貸であれば解約や原状回復など、実務的な手続きが待っています。
終活サロンでは、こうした実務についても専門家と連携しながらサポートしてくれます。司法書士や不動産業者とのつながりがあるサロンも多く、相続・売却・譲渡などの相談をワンストップで行えるのは大きな利点です。
そして最後に、「気持ちの区切りをつける儀式」も提案されることがあります。たとえば、整理が終わった後に家族で小さなお別れ会を開く、思い出の品をフォトブックにまとめるなど、物理的な整理だけでなく、心の整理につながる時間を大切にするのです。

家族葬という選択には、「静かに、あたたかく送りたい」という家族の想いが込められています。そしてその想いを最後まで貫くために欠かせないのが、遺品整理という作業です。単なる片付けではなく、故人と向き合い、残された家族が前を向いていくための“心の節目”として、遺品整理は存在します。
終活サロンは、その大切なプロセスを伴走してくれる心強い味方です。専門的な知識と、なによりも「人の気持ち」を理解してくれる場だからこそ、悔いのない遺品整理が可能になります。身近な人を見送ったあと、どう歩き出せばよいか分からないとき――終活サロンという選択肢が、あなたに寄り添ってくれるかもしれません。